愛染 あいぜん 愛染明王 あいぜんみょうおう・あいぜんみやうわう 天弓愛染 てんきゅうあいぜん 愛染曼荼羅(曼陀羅)あいぜんまんだら

 

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あいぜん(愛染)

愛染明王の略、梵語、羅誐(Raga ラーガ)の訳、ラーガは愛着、親愛等の義あると共に、染色彩色等の義あるを以て、両義を併せて愛染と訳したものであらう。またラーガには赤色、赤性の義がある。これ即ち愛染明王の膚色の赤色なのに縁があるやうである。愛染明王はもと印度の神、のち真言密教中の神となつたが、その身は赤色、師子冠を戴き、三目六臂を具へて忿怒の相を示し、冠上に五鈷を飾り、蓮花、弓箭、宝鈴、五鈷を左右三双の手に把り、赤蓮華に座してゐる。蓮華には宝瓶があつて、その両畔から、諸種の宝を吐出し、三十七の伴神、前後を囲繞すといふ。この神を祭つて悪心降伏を祈ることは『瑜祇経』の愛染王品に基くものであるが、天台宗ではこの神を祀る法即ち愛染明王法を、六秘法の第四に数へ、また真言宗では寺毎にこれを祀り害毒消除の善神としてゐる。愛染王は愛染明王法の略、愛染宝塔は、この尊を奉祀した塔の名である。  (仏教辞林)

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

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愛染明王坐像 鎌倉時代・13世紀

あいぜんみやうわう(愛染明王

仏教にて明王の一つで、愛欲を司る神である。専ら真言密教に於て奉ぜらる、形相身色、日の光の如く赤く、三目忿怒の形を顕わす。首髻に獅子冠を戴き、六臂にして各手に蓮華弓箭宝鈴五鈷を執り、赤蓮華上に坐す、蓮華下に宝瓶あり、之より諸種の宝を吐く、能く大染法を成し一切の悪心を滅し、無上菩提の法財を施すという。密教の最も行われたる平安朝時代の末期から鎌倉時代にかけて信仰あり、後醍醐天皇なども最も御信仰遊ばされたる一人である。随って或は木彫に或は仏画に作られたるもの其の時代に於て最も多い。

 

『画題辞典』斎藤隆

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愛染明王像 14世紀

『金剛峯楼閣一切瑜珈瑜祇経』に説く、獅子冠をかぶり3つの目と6本の腕をもつ愛染明王。真赤な身色も、経典に日が輝く如しと説くことを典拠とする。めらめらと燃えるかのように逆立つ焔髪、眉を吊り上げ睨みつける目、牙をみせて開く口で怒りを表わす。目に水晶の板を嵌め込む玉眼という技法が迫力を出すのに効果的である。左肩にかける条帛、下半身に着ける裙には、截金(線状に切った金箔)による文様がのこる。愛染明王は金剛薩埵菩薩の化身なので怒りの顔も卑しくない。
内山永久寺に伝来したことが知られ、検討の余地を残すものの、『内山之記』にある薬師院安置の雲賀造像像と考えられる。彫刻作品としてのみならず、厨子の絵画や色紙形の書、金属製瓔珞(ようらく)の細工など、総合芸術として貴重な作品である。
普通、愛染明王は中段左手に弓、中段右手に矢を持つが、本像の中段左手は持物を取る仕様になっていない。

 

e国宝

瑜祇経』第五品の偈頌によるとそれぞれの手に持つのは

左手持金鈴 右執五峯杵

次左金剛弓 右執金剛箭

左下手持彼 右蓮如打勢

左第三手は通常持物を持たず五指を曲げて拳を作るものが多いが、先ほどの『瑜祇経』の偈では「左下手持彼」とある。

(中略)

「彼」については行者の求める所によって三昧耶形、つまり持物が異なるのである。例えば、日輪は息災法、宝珠は増益法、一鈷(一股)は調伏法、人頭あるいは蓮華は敬愛法、鈎は鈎召法、甲冑は延命法云々となる。

 

『日本の美術No.376』

弓に矢を番えて天に向ける天弓愛染という姿もある

瑜祇経』第五品の偈頌のうち「如射衆星光」(衆星の光を射るが如し)という部分を忠実に表現したものとみられる

 

『日本の美術No.376』

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愛染明王像 金剛峯寺明王院

てんきゆうあいぜん(天弓愛染)

愛染明王は三目六臂であるが、その下の左手には金剛弓、右手には金剛箭を持つ、然して時にその弓箭を天に向つて射放たんとする姿のものがある、これを天弓愛染といふ。

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

不動明王と合体したりもする

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両頭愛染曼荼羅図(りょうずあいぜんまんだらず)鎌倉時代14世紀 金剛峯寺

両頭愛染というのは、愛染明王(向かって左)に不動明王(右)が合体したもので、『覚禅鈔』では円仁請来とされている。二面六臂のうち、左右第一手は愛染の通常の持物である金剛杵と金剛鈴、第三手は弓と矢だが、左右第二手は不動の持物である剣と索を持つ。

 

弘法大師入唐一二〇〇年記念 空海高野山』2003

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愛染曼荼羅 鎌倉時代

あいぜんまんだら(愛染曼荼羅

愛染明王を中心とした曼荼羅で、四周に意生、計里枳羅、愛楽、意気の四金剛及び、色聖香味の四菩隆を安置し、外院には時春、時雨、時秋、時冬の四菩薩を配したもの、藤原時代の作に多い。主なるもの左の通り

山城国小野随心院所蔵 国宝、播磨国伊川谷太山寺蔵 国宝

山城国醍醐三宝院所蔵(裏書に嘉元三年七月三日隆勝)一幅

同上        (長享二年三月写金剛仏子弘宣の銘記)一幅

故小泉三申氏旧蔵(鎌倉時代)一幅

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

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 愛染曼荼羅