揚巻・総角 あげまき

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三浦屋揚巻

歌舞伎十八番助六所縁江戸桜』に出る三浦屋の傾城、

慮外ながら揚巻で御座んす、男を立る助六が深間、鬼の女房に鬼神とやら、今からが揚巻の悪体の初音、お前と助六さんを並べて見た所が、こちらは立派な男振、こちらは意地の悪さうな男付、喩へて言はゞ雪と墨、硯の海も鳴戸の海も、海といふ名は一つでも深いと浅いは客と間夫、間夫がなければ女郎は暗がり、くらがりで見ても助六さんとお前、取違へてよいものか

の気焔が見せ場、聞かせ場になつてゐる。

此の揚巻は、もと京都島原の遊女で総角と呼んだのを作りかへたものといふ。

島原青楼丹波屋に蓄ふる所の妓、名は総角色芸千里に甲たり、助六深くこれと相馴む、人因て総巻助六と号す。(人名辞書)

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

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四代目岩井半四郎の揚巻 勝川春章

揚巻あげまき

正徳(1711-16)ごろ、江戸吉原の三浦屋で名妓のきこえが高かった遊女。歌舞伎十八番助六」の登場人物として有名。元禄(1688-1704)ごろ上方で侠客万屋助六と情死した、揚巻という遊女があったといわれる。巷説では、万屋助六という男が揚巻のもとへ通いつめ、親の勘当をうけ、縁切金千両で揚巻を身請けして、子供を親の門前に捨て子して心中したという(伊原青々園団十郎の芝居』)

 

『日本伝奇伝説大辞典』 角川書店 1986

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実競色乃美名家見 三浦屋総角 万屋助六 喜多川歌麿

〝実競〟は男女の実(まこと)を比べ競う、〝色乃美名家見〟は色の水上、つまり色事の源・根源の意味である。

男達(おとこだて)の万屋助六と島原の遊女揚巻との心中事件に取材した浄瑠璃・戯曲を助六物と呼ぶ。髭の意休と揚巻・助六が舞台上に並ぶ華やかな前半部分が著名であるが、この図は後半、助六が意休を殺害して友切丸を奪い、揚巻の機転で辛くも逃れる場面。天水桶に入ってずぶぬれとなった助六を揚巻が自らの衣装で隠している。

 

喜多川歌麿」展図録 朝日新聞社 1995