近江八景 おうみはっけい・あふみはつけい
近江八景図屏風
あふみはつけい(近江八景)
琶琵湖畔の八景勝で、明応九年近衛政家、尚通父子が、支那洞庭湖畔の瀟湘八景 に擬して歌を詠んだのに始るといふ、『和漢名数』山口幸允の『嘉良喜随筆』に見える、八景は、
比良暮雪、堅田落雁、唐崎夜雨、三井晩鐘、瀬田夕照、粟津晴嵐、矢走帰帆、石山秋月
である、比良山は湖の西、比叡の北に聳え、堅田は大津市の北三里、湖岸から水上に突出した浮見堂が名高く、海門山満長寺といひ、京都紫野大徳寺の末寺、恵心僧都の創建と伝へられ、僧都作といふ弥陀像を安置する、唐崎は堅田の南で、此の老松は有名であつたが今は枯死してしまつて、支柱のみ残り、今では新唐崎がその面影を伝へる、三井は即ち天台の古刹園城寺、即ち三井寺で大津市の西北有名な鐘楼がある、瀬田の唐橋は瀬田川に架し、長橋ともいひ、石山寺は湖の南方勢多川の畔にある、紫式部が源氏物語を執筆した処として名高く、粟津は大津から石山に到る沿道で木曽義仲の戦死した古戦場、矢走は今野路村に合して瀬田の北に当る。
鎖あけて月さし入れよ浮御堂 芭蕉
唐崎の松は花よりおぼろにて 同
近江八景を画けるもの古来少からず。
『東洋画題綜覧』金井紫雲
明應九年八月十三日太政大臣近衛政家父子管領六角高頼の招請により湖上に遊び支那洞庭湖八勝に模して湖畔の八勝地を和歌に詠ぜられしに始まる
『新撰近江名所図会』清水新兵衛 編
しょうしょうはっけい【瀟湘八景】
中国絵画の画題。瀟湘は湖南省の洞庭湖の南,瀟水,湘水の合流するあたりの景勝地。瀟湘八景はその一帯から八つの地を選んだもの。山市晴嵐,漁村夕照,遠浦帰帆,瀟湘夜雨,煙寺晩鐘,洞庭秋月,平沙落雁,江天暮雪をいう。北宋の文人宋迪(そうてき)がはじめたといい,11~12世紀に画題として成立。牧渓(もつけい),王洪,馬遠らがよく描いた。
坐舗八景 塗桶の暮雪 鈴木春信
坐舗八景 琴路の落雁 鈴木春信
坐敷八景 台子の夜雨 鈴木春信
坐敷八景 とけひの晩鐘 鈴木春信
坐敷八景 あんとうの夕照 鈴木春信
坐敷八景 あふきの晴嵐 鈴木春信
坐舗八景 手拭掛帰帆 鈴木春信
坐敷八景 鏡台の秋月 鈴木春信