安倍晴明 あべのせいめい(921-1005) 葛の葉 くずのは

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 安倍晴明

安倍晴明藤原道長(966-1027)の日記『御堂関白記』などに陰陽師として登場している。官職としては陰陽寮天文博士であった。その主たる職務は、気象や天文を観測し変異を占い天文蜜奏や祭祀を行うことであるが、貴族たちの個人的な吉凶や方角の占い・呪術などでも厚い信頼を得ていた。晴明が関与した祭として熒惑星祭・泰山府君祭・玄宮北極祭などが記録に見られ、陰陽道の祭に道教起源のものが多いことがこの例からも推測できる。晴明は、時代を経るとともに式神を自由に操る超能力者として伝説化していく。

 

道教の美術 TAOISM ART』読売新聞大阪本社大阪市立美術館 2009

松明を持った従者が式神

あべせいめい(安倍晴明

天文博士、父を益材といひ大膳大夫であつた、晴明初め加茂忠行及び其の子保憲に従つて陰陽推算の術を学び、天文を究め、占易を試みるに的中すること神のやうであつた、進んで従四位下に叙せられ、天文博士、大膳大夫、播磨守に歴任した、晴明に就いては種々の逸話がある、華山天皇が御位を遜かれ夜潜かに宮を出てさせ給うた、近侍と雖も知るものがなかつた、その夜晴明暑を庭に避けて居たが、空を仰ぐと天象に異変があつたので大に驚き、宮廷に侍候したが、天皇果して在しまさず、又、長徳年中、術を行ふ者があり、左大臣藤原道長に告げて曰ふ、某月某日怪しい事があると、道長怖れてその期日が来ると門を閉ぢ客を謝し、邸には源頼光、医師丹波忠明、僧正勧修及晴明を招いて無事を祈つてゐた、偶々大和から瓜を献じたものがある、道長は疑つて之を食はず、時に晴明の曰く、此の瓜には必らず毒があらうと、そこで勧修が呪を唱へると瓜一個転り出した、忠明針を以て之を刺すと、瓜は動かなくなつた、頼光即ち刀を以て之を斫ると果して、中に小蛇が居り、針はその眼を貫いてゐた。又、道長は常に一頭の犬を畜つてゐた、家を出づる毎に必らず従ふ、一日法成寺へ行かうとして家を出たが、犬は前を遮り、裾を啣へて離さない、道長怪んで晴明を召しこれを質すと、晴明の曰く、これは相府を呪咀するものがあるからである、何か地中に埋めたものがあらうと、その指す所を掘ると密封した土器が現はれ、中には一字を朱書したものが入つてゐた、晴明の曰く、此の術を知るもの道満法師の外にない、彼の為す処であらうと、紙を結んで鳥の形とし呪文を唱へて之を放すと、紙は鷺となつて万里小路河原院側の民家に止まる、その主を捕へると果して道満であつたので捕ヘて之を播磨に逐つた、かうした逸話は幾らもある、著はす処、金烏玉兎集、占事略一巻がある。(大日本史

此の晴明の子保名と芦屋道満、これに葛の葉を絡んだ戯曲に『芦屋道満大内鑑』があり、清元に『保名』がある。

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

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不動利益縁起絵巻

三井寺の僧智興が病に伏せた時、安倍晴明に祈祷を依頼したが、身代わりの者が死ぬことでしか命が助からないと聞く。智興の弟子たちは尻込みするするが、証空が進み出て身代わりとなった。しかし、証空が日頃礼拝していた不動明王画像に助けを求めると、この絵像が涙を流し身代わりを約束し、不動が冥府に赴いて師弟ともに全快させたという話である。この説話は古く『今昔物語集』にり、同書では晴明が泰山府君祭を行って冥道の神(泰山府君)に聞き届けられたとされるが、鎌倉初期の鴨長明著『発心集』などでは、それに不動明王が加わり不動の利益を説く仏教色の濃い話へと変化している。画中には晴明が使役する式神が随所に描かれ、また、晴明が泰山府君の都状(祭文)を読む祭壇の前には付喪神などの疫病神が並んでいる。

 

道教の美術 TAOISM ART』読売新聞大阪本社大阪市立美術館 2009

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木曾街道六十九次之内 妻籠 安倍保名 葛葉狐 歌川国芳

葛の葉

古浄瑠璃(こじょうるり)「しのだづま」のヒロイン。
信太(しのだ)の森にすむ白狐。人の姿と名とをかりて恩人安倍保名(あべの-やすな)の妻となり,子をなすが,正体をわが子にみられ,「恋しくば尋ねきてみよいづみなるしのだの森のうらみ葛の葉」の歌をのこして姿をけす。大和(奈良県)地方につたわる異類婚姻譚がもとになっている。

 

『日本人名大辞典』講談社

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芦屋道満大内鑑 豊国

蘆屋道満大内鑑

異類婚姻譚として著名な信田妻(しのだづま)の伝承は17世紀後半からしばしば人形浄瑠璃や歌舞伎に取り上げられていたが,本作はそれらを集大成した作品。秘伝書《金烏玉兎集(きんうぎよくとしゆう)》をめぐる安倍保名(やすな)と蘆屋道満との対立を主筋とし,保名に助けられた白狐が許婚葛の葉姫の姿を借りて契りを交わし一子を儲けるという安倍晴明の出生譚を絡めたもの。竹本大和掾の風を伝える四段目口の〈葛の葉子別れの段〉がもっぱら上演されてきた

 

『世界大百科辞典第二版』平凡社

 

芦屋道満大内鑑~葛の葉 | 歌舞伎演目案内 – Kabuki Play Guide –