天橋立 あまのはしだて
本朝名所 天橋立 広重
天橋立図屏風
日本三景の一、京都府、丹後の国の日本海岸にある、若狭湾の副湾たる宮津湾と与謝の海との間を限る砂嘴で、その尖端が鍵状になつてゐる、蜿蜒虹の如く実に三十町に及び、青松白砂絵の如く、その西北の成相山中腹傘松のあたりから縦一文字に俯瞰する風景が優れてゐる、樗峠から横一文字に眺めるのもよい、橋立の南端文珠村には有名な切戸の文珠があり、その渡を文珠の渡といふ、『倭訓栞』には、
丹後与謝郡にあり、神代口訣に、古伝、天浮橋現事相、天橋立長二千九百九十丈、広九丈二尺、名霊浜と見えたり、日本三景の一なりといへり。
とある、和歌にも聞えてゐる。
よさの海内外の浜にうらさびてうと世をわたる天のはし立
みつ潮のとほりかねてやのぼるらむ波さへたかき天のはし立 源順
天橋立を画いたものゝ中では、有名な雪舟の『天橋立真景』（山内侯爵蔵）があり、橋立の大観を遺憾なく描き出してゐる。
『東洋画題綜覧』金井紫雲
天橋立図
かなり高い位置から橋立と その周辺を捉えているが、このように見える場所も実際は存在しない。近年の指摘によれば、こうした実景との違いは、雪舟が中国画の学習で培った山水画の画 面構成法をもとにして実景部分を再構成したためであるという。とくにこの図の俯瞰（ふかん）的な構成法は、おそらく中国の景勝地を描いた西湖図などのそれ を強く意識した結果なのであろう。
松島・天橋立図扇面 鶴沢探索
諸国名所百景 丹後 天橋立 広重
六十余州名所図絵 丹後 天の橋立 広重
橋立雨中雷 一勇斎国芳
