意馬心猿 いばしんえん・いばしんゑん 馬上封侯 ばじょうほうこう

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意馬心猿図 柴田是真

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意馬心猿 尾形月耕

いばしんゑん(意馬心猿)

意馬心猿は煩悩妄念の、内に働きて心の静まらざるさまなり。仏語に「まことに意馬六塵の境に馳せ心猿十悪の技にうつる」とあり。息心銘に「識馬易奔、心猿難制」ともあり。

 

『画題辞典』斎藤隆

 

 

繋がれて逸る馬と、樹上の猿を画いて斯く題す、出所は梵網経からで、人の欲情の制し難いのを諷してゐる。

心馬馳、悪道放逸匝禁制。(梵網経)

一切衆生の煩悩のために、情の動いて制し難いのを馬や猿の、やゝもすれば逸し去らうとするに譬へた語。心地経の『心如猿猴、遊五欲樹不暫住故』又は『趙州録遺表』に『心猿罷跳、意馬休馳』などから来てゐる。

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲 

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猿馬圖 韓幹

 

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いばしんえん/意馬心猿

凡夫の心を馬が荒れる様子と猿の落ち着きのなさにたとえて言うこと。心猿意馬ともいう。法然は『登山状』の中で、『観経』の定善義を説明するにあたり、「その定善の門にいらんとすれば、すなわち意馬荒れて六塵の境に馳す、かの散善の門に臨まんとすれば、また心猿遊んで十悪の枝に移る。かれを静めんとすれども得ず、これを止めんとすれども能わず」(聖典四・四九八/昭法全四二一)と、凡夫の心を捉えている。このたとえは、曇鸞『略論安楽浄土義』にも、「然るに凡夫の心猶なお野馬のごとし。劇して猿猴なるを識しる。六塵を馳騁じていし、暫くも停息せず」(浄全一・六七二上)とある。

 

WEB版新纂浄土宗大辞典

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猿猴図 伝趙雍

猿猴

本図には馬上に猿が乗る姿が描かれている。中国では猿は手長猿を意味し、これに対し孫悟空のようなタイプを猴という。普通、馬上に描かれるのは猴であり、これは吉祥図として「馬上封侯」の意味をもつ。馬上という言葉は中国語で「すぐに、まもなく」という意味をもつ。また、猴は侯と同音同声であることから、馬上の猴の図はすぐに侯に封ぜられ出世することを願う寓意をもつ。本図においては馬も猿もともに寝姿に描かれ、あたかも「果報は寝て待て」の図のようでもある。本来は猴を描くべきところを猿にしているのは、あるいは当時の日本で好まれた牧谿猿を意識した日本向けの寧波画であったことを思わせる。

 

e国宝

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白玉馬上封侯書鎮 東京国立博物館

馬の背にサルがしがみついている。馬上は中国語で間もなくという意味であり、猴(サル)は侯と発音が同じであることから、間もなく侯に封ぜられることを寓意している。清時代の玉器である。文房具の一種の書鎮として作られたものであろう。

 

『吉祥—中国美術にこめられた意味』東京国立博物館 1998