兎 うさぎ 因幡の白兎 いなばのしろうさぎ 波兎 なみうさぎ 竹生島 ちくぶしま

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兎図

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兎図 伝孫隆

うさぎ(兎)

兎は兎科に属する哺乳動物で、その種類は沢山あるが、普通野兎と飼兎とに区分することが出来る、野兎は日本内地に広く分布し所や風土に依り体毛の色彩を異にしてゐる、暗色のものもあれば淡褐色のものもある、夏毛は概して色が濃く、常に山野に棲息して小丘を登ることが巧みであるが、降るのは拙劣で時に転落することがある、一種越後野兎は普通野兎に似てゐるが黒毛を交へ、冬は白色となる点が違つてゐる、飼兎は体色純白で耳長く眼は紅玉の如く、いろ/\種類がある、なほ一種奄美大島には奄美黒兎といふ一種があり天然記念物として保護を加へられてゐる、芸術に現はれるものは、普通野兎と飼兎で、月を象徴する動物として古来いろ/\の方面に交渉をもち、絵画に現はれたものも無数である

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

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鳥獣人物戯画

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兎桔梗図 俵屋宗達

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禽獣梅竹図 兎 俵屋宗達

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松に兎図 岸岱

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大国主命因幡の白兎と鰐 前北斎戴斗

因幡の白兎 いなばのしろうさぎ
神話・伝承に出てくる白兎。因幡国に渡ろうと考えた隠岐島の兎は、鮫をだますことを思い付き、同族の多さを比べようと鮫に呼びかけて、鮫を因幡国の気多崎まで並ばせた。その上を踏み数えながら渡った白兎は、まさに計画が成功しようとしたとき、「お前たちはだまされたのだ」といったばかりに、最後の鮫に捕らえられて皮をはがれてしまう。このとき兄たちの求婚旅行の袋担ぎとして同行していた大汝神(おおなむちのかみ)(大国主命(おおくにぬしのみこと))が兎に会い、兄たちとは反対に、親切に兎に治療法を教えてやった。それで兎は「あなたこそ求婚に成功なさるでしょう」と予言した。
 この『古事記』にみえる兎と鮫の話は、狡猾な動物が魯鈍な動物をだます動物譚として、ジャワ島やインドネシアに存在している説話などとも関係がある。しかし『古事記』では狡猾な兎が失敗する話につくりかえられており、助けられた兎が、いちばん卑しい大汝神の成功を予言する兎神としての役割を演じている点に注意する必要がある。
日本大百科全書(ニッポニカ) 小学館

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月に兎 鈴木春信

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月に兎 喜多川歌麿

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兎を抱く美人 並岡耕好

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月に兎 広重

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木賊兎図 円山応挙

つきにうさぎ(月兎)

月に兎を配すること、種々の伝説や口碑などから来ている、月面に兎の姿を見るといふも古くからの言ならはしで、花鳥画としては時に木賊など添へて画かる。

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

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月と波兎 狩野常信

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波に兎

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能楽図絵 竹生島 月岡耕漁

竹生島 ちくぶしま

 醍醐天皇に仕える臣下(ワキ)が竹生島参詣を志し、近江の国に出かける。琵琶湖畔で老人(シテ)と若い女(ツレ)を乗せた舟に便乗し、竹生島に着く。女も同行するので、し臣下がこの島は女人禁制ではないのかと問うと、老人は、島に祀る弁才天は女体の神だから女を分け隔てはしないと答え、島の由来を語った末、実は自分たちは人間ではないと言って、女は社殿の中に、老人は湖水の波間に姿を消す(中入)。やがて社殿が鳴動し、弁才天(後ツレ)が姿を現し、舞を舞う。湖上には竜神(後シテ)も現れ、金銀珠玉を臣下に捧げ、国土の安全を守ることを誓って、水中に消える。

 

『岩波講座 能・狂言 Ⅵ能鑑賞案内』 岩波書店 1989

 

 

謡曲竹生島

浦を隔てて行くほどに、竹生島も見えたりや。
緑樹影沈んで、魚 木に上る景色あり、
海上に浮かんでは、 兎も波を走るか、
面白の浦の景色や。

(現代語訳)

湖岸を離れて進みゆくうちに、竹生島も見えてきたではないか。木々の緑の影が湖面に映り、湖底に沈んで、水中に泳ぐ魚はあたかもその木々に登るかのよう。月が湖上に影を映すと、月の中の兎も波の上を走るのかと思われる。なんとまあ面白いこの島の景色であること。

 

『日本古典文学全集41 謡曲集下』小学館