瓜 うり 瓜瓞綿綿 かてつめんめん 草虫図 そうちゅうず

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瓜図 山田道安

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秋瓜図 銭選

うり(瓜)

蔬果類を総称して瓜といふ、何れも胡芦〈ゆふがお〉科に属する蔓性の一年生草本で、その大部分は食用に供されてゐる、胡瓜〈きうり〉、甜瓜〈まくはうり〉、越瓜〈しろうり〉、南瓜〈かほちや〉、西瓜、冬瓜など、此の外、胡芦〈ゆふがお〉は瓢箪として知られ、酒器となり、糸瓜はその糸状繊維は種々の用途に供せられる、芸術方面に多く現はれるのは、甜瓜最も多く、近頃はメロンが現はれて現代的に描写されて居り、次いで胡芦〈ゆふがお〉、糸瓜俳画などに画かるゝ場合多く、南瓜、胡瓜も時々画材となる。

 

『東洋画題綜覧』金井紫雲

 

 

瓜瓞綿綿 かてつめんめん

 かつての中国において、多くの子や孫にめぐまれ、世代が連綿と長く続き、先祖に供える香火を絶やさないことは重大な関心事であった。多子は「五福(長寿・富裕・健康と徳を好むこと、天命を全うすること)」の中には入れられていないものの、三つの幸福を象徴する「三多」には、多福、多寿とともに多男子が数えられている。ちなみに、「多男子」の語は『荘子』「天地篇」にある「華封三祝」、すなわち華(町の名)の封人(国境警備にあたる防人)が「聖人は富まれんことを、長寿たられんことを、男子多かられんことを」と尭(古の聖天子)を祝した故事に由来している。

(中略)

子子孫孫の繁栄を祝する「瓜瓞綿綿」の句は、五経の一つである『詩経』に由来している。蔓が長くのび、たくさんの実をつける瓜は、世代の連続と多子を象徴する代表的な吉祥である。

 

特別展『吉祥—中国美術にこめられた意味』東京国立博物館 1998

 

 

詩經・大雅

綿

綿綿瓜瓞

民之初生 自土沮漆

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瓜虫図 呂敬甫

本図は延々と蔓を左右に伸ばす瓜と瓞(小さい瓜)を中心に蟷螂、蝗、蝶、蜻蛉、虻が描かれている。瓜瓞は多子と子孫繁栄を寓意し「瓜瓞綿綿」の吉祥図となる。蝶は瓜瓞の瓞と音通となることから、瓜と蝶でも「瓜瓞綿綿」となるという。蝗は『詩経』の「螽斯(しゅうし)」(螽斯は蝗)より子孫繁栄を寓意している。

 

特別展『吉祥—中国美術にこめられた意味』東京国立博物館 1998

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竹虫図 伝趙昌

本図は「趙昌の曲り竹」として知られる作品。曲竹を中心に地瓜、鶏頭花、蝶、蜻蛉、鈴虫、轡虫などの草虫が繊細な筆と鮮麗な賦彩により写実的に描かれている。草虫図に登場する草花や虫には様々な寓意があったと思われる。たとえば、瓜は子孫繁栄、長久を寓意するが、本図にも瓜が描かれている。また鶏頭花は蟈蟈(キリギリス)と合わせて立身出世を意味する「官上加官」の吉祥図となる。本図には蟈蟈は描かれていないが、おそらく鶏頭花は立身出世の寓意をもつものとして意識されていたと思われる。

 

e国宝

 

 

仙人や羅漢の杖と関連付けられることからも、曲がり竹には吉祥の意味があったと推定されます。

 

1089ブログ 名品の名品たる所以―伝趙昌筆「竹虫図」の場合―

 

 

北宋時代以降、草虫画は昆陵(江蘇省常州)と結び付き、地方の名産として定着し、盛んに描かれるようになった。常州草虫画は主に日本に多く伝存しているが、本図に描かれた花草や昆虫は吉祥的な意味を持つモティーフとして頻出するもので、常州草虫画の一例と見なすことができる。但し、後の元・明時代の所謂「紅白川」画の定型的な構図・表現とは異なり、着色画として南宋時代に遡り得る現存最古の作例と見なされている。

 

『特別展東山御物の美—足利将軍家の至宝—』三井記念美術館 2014年

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草虫図

①中国では江蘇省常州(毘陵)を中心に多くの草虫画が描かれ、豊かな色彩で幸せあふれる主題を描きます。それらの絵画は、日本に伝来してのちは、「常州(毘州)草虫画」として広く知られてきました。本図はその中でも古作に属する作例で、自然さと克明な描写を特徴としています。 ②(左幅) 中央に蜀葵(しょっき)(タチアオイ)、菊を描き、手前左にオオバコ、右手にナスを描いています。トンボや蝶、蜂などが飛び、カマキリが顔をのぞかせます。豊かな花を咲かせる芙蓉には栄華の、萱草(かんぞう)には男子誕生を願う意味がありました。華麗な画面に昔の中国人の幸せを願う意味が充満しています。 ③(右幅) 中央に大きく黄立葵トロロアオイ)と鶏頭、鳳仙花を描き、手前左に地瓜、右に露草を描いています。それぞれ番(つが)いで蝶や蜂が飛び、根元に一匹のカタツムリが這い出している。鶏頭には立身の意味が、多くの実をつける植物は、多子を願う吉祥の意味もありました。

 

ColBase国立博物館所蔵品統合検索システム

 

 

鶏頭の花は、その姿からもまた太陽が照りつける時期に咲くことからも、太陽と結びついた特別の花として扱われてきた。

(中略)

草虫図に描かれた鶏頭には、伝趙昌の竹虫図のようにクツワムシのような虫が止まっていることが多い。これは、鶏頭の中国名「鶏冠花」の「冠」が「官」と同音(guan)であることから、キリギリス「蝈児(guōr)」(官僚を指す「官児(guār)」とは音が類似)が上に止まった図柄で、「官上加官」すなわち官界での順調な出世の寓意とみなされていた。

 

『花鳥・山水画を読み解く—中国絵画の意味』宮崎法子 角川書店 2003

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鶏頭蟷螂図 伊藤若冲

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糸瓜群虫図 若冲

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瓜茄子図 尾形光琳

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蟷螂と蝉 沈南蘋

荘子山木篇第二十 蟷螂窺蟬

蝉を狙う蟷螂

蟷螂を狙う鵲に似た鳥

その鳥を我を忘れて狙う荘子

荘子もまた栗林の番人に追いかけられる