蓬生 よもぎう・よもぎふ【源氏物語 第十五帖】

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源氏物語画帖 蓬生 土佐派

(第三章 末摘花の物語久しぶりの再会の物語 第三段 源氏、邸内に入る)

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蓬生

(第三章 末摘花の物語久しぶりの再会の物語 第三段 源氏、邸内に入る)

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源氏物語絵色紙帖 蓬生 詞近衛信尋 土佐光吉

露すこし払はせてなむ入らせたまふべきと聞こゆれば

尋ねても我こそ訪はめ道もなく 深き蓬のもとの心を

(第三章 末摘花の物語久しぶりの再会の物語 第三段 源氏、邸内に入る)

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蓬生 土佐光信

尋ねても我こそ訪はめ道もなく 深き蓬のもとの心を

と独りごちてなほ下りたまへば御先の露を馬の鞭して払ひつつ入れたてまつる雨そそきもなほ秋の時雨めきてうちそそけば御傘さぶらふ

(第三章 末摘花の物語久しぶりの再会の物語 第三段 源氏、邸内に入る)

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源氏物語絵色紙帖 蓬生 詞近江信尹 長次郎

年を経て待つしるしなきわが宿を花のたよりに過ぎぬばかりか

と忍びやかにうちみじろきたまへるけはひも袖の香も昔よりはねびまさりたまへるにやと思され

(第三章 末摘花の物語久しぶりの再会の物語 第四段 末摘花と再会)

よもぎふ(蓬生)

源氏物語の一節なり、末摘花の巻にある常陸の宮の姫君の、源氏須磨へ赴かれて後、藁屋の住居して御座せしを、源氏歸京の後花散里の方へ行く道を尋ね給ふに、御供の人々申せしに葎生蓬生繁りし家こそ末摘花御佳居なりと、露分けて尋ね入り玉ふ、尋れとも家こそとはめ道もなく深きよもぎのもとの心を源氏絵の一として画かるゝものなり

 

『画題辞典』斎藤隆

 

 

 よもぎう(蓬生)

よもぎなどの生い茂っている所。草深い荒れ果てた土地。自分の家をへりくだってもいう。
※拾遺(1005‐07頃か)雑賀・一二〇三「いかでかは尋ね来つらん蓬ふの人も通はぬわが宿の道〈よみ人しらず〉」
 

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源氏物語画帖

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源氏物語絵巻 蓬生

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源氏香の図 蓬生 豊国

 

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絵入源氏物語 早稲田大学図書館

第一章 末摘花の物語 光る源氏の須磨明石離京時代

第三段 常陸宮邸の荒廃

兄の禅師ぜんじだけはまれに山から京へ出た時にたずねて来るが、その人も昔風な人で、同じ僧といっても生活する能力が全然ない、脱俗したとほめて言えば言えるような男であったから、庭の雑草を払わせればきれいになるものとも気がつかない。浅茅あさじは庭の表も見えぬほど茂って、よもぎは軒の高さに達するほど、むぐらは西門、東門を閉じてしまったというと用心がよくなったようにも聞こえるが、くずれた土塀どべいは牛や馬が踏みならしてしまい、春夏には無礼な牧童が放牧をしに来た。

 

紫式部 與謝野晶子訳 源氏物語 蓬生

 

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絵入源氏物語 早稲田大学図書館

第二章 末摘花の物語 光る源氏帰京後

第三段 叔母、末摘花を誘う

平生はそれほど親密にはしていないのであるが、つれて行きたい心から、作った女王の衣裳いしょうなども持って、よい車に乗って来た得意な顔の夫人がにわかに常陸の宮邸へ現われたのである。門をあけさせている時から目にはいってくるものは荒廃そのもののような寂しい庭であった。門の扉も安定がなくなっていて倒れたのを、供の者が立て直したりする騒ぎである。この草の中にもどこかに三つだけの道はついているはずであると皆が捜した。そしてやっと建物の南向きの縁の所へ車を着けた。
 きまりの悪い迷惑なことと思いながら女王は侍従を応接に出した。すすけた几帳きちょうを押し出しながら侍従は客と対したのである。

 

紫式部 與謝野晶子訳 源氏物語 蓬生

 

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絵入源氏物語 早稲田大学図書館

第三章 末摘花の物語 久しぶりの再会の物語

第三段 源氏、邸内に入る

源氏は非常に哀れに思った。この廃邸じみた家に、どんな気持ちで住んでいることであろう、それを自分は今まで捨てていたと思うと、源氏は自分ながらも冷酷であったと省みられるのであった。
「どうしようかね、こんなふうに出かけて来ることも近ごろは容易でないのだから、この機会でなくては訪ねられないだろう。すべてのことを綜合そうごうして考えてみても昔のままに独身でいる想像のつく人だ」
 と源氏は言いながらも、この邸へはいって行くことにはなお躊躇ちゅうちょがされた。この実感からよい歌をんでまず贈りたい気のする場合であるが、機敏に返歌のできないことも昔のままであったなら、待たされる使いがどんなに迷惑をするかしれないと思ってそれはやめることにした。惟光も源氏がすぐにはいって行くことは不可能だと思った。
「とても中をお歩きになれないほどの露でございます。よもぎを少し払わせましてからおいでになりましたら」
 この惟光これみつの言葉を聞いて、源氏は、

尋ねてもわれこそはめ道もなく深き蓬のもとの心を


 と口ずさんだが、やはり車からすぐにりてしまった。惟光は草の露を馬のむちで払いながら案内した。木の枝から散るしずくも秋の時雨しぐれのように荒く降るので、かさを源氏にさしかけさせた。惟光が、
「木の下露は雨にまされり(みさぶらひ御笠みかさと申せ宮城野みやぎのの)でございます」
 と言う。源氏の指貫さしぬきすそはひどくれた。昔でさえあるかないかであった中門などは影もなくなっている。家の中へはいるのもむき出しな気のすることであったが、だれも人は見ていなかった。

 

紫式部 與謝野晶子訳 源氏物語 蓬生